雨の日のアイリス

小まとめ

第17回電撃小説大賞4次選考作。家政婦ロボット・アイリスとロボット研究者・アンヴレラ博士が主人公。アイリスがボロボロのロボットになってしまうまでの過酷な道筋を描いた物語。

雨の日のアイリス (電撃文庫)

雨の日のアイリス (電撃文庫)

雑感

第一章では人間と変わらない扱いを受けるロボットとして、一人の存在としてのロボットとしての物語。
第二章ではただの部品として扱われるロボットとして、同じ境遇の仲間との出会う物語。
第三章では意思を決めた一人のロボットとして、生きることを追い求める物語。

あらすじやカラーイラスト、最初の一ページ目をさらっとチェックするだけでも不幸に向かっていることがわかる第一章。そこでアイリスとアンブレラ博士のお互いのふわふわした日常がずっと続くと信じている描写が胸にちくちくとささりながらも、いちゃいちゃに癒やされた。このあたりにしかないアイリスと博士のやりとりだけで1冊読みたくなる。第一章の百合百合っぷり超絶な親愛があるからこそこの先の展開が光った。
そこから急転直下に落ちてスクラップになって奴隷扱いを受けていくアイリスと、仲間として時間を共有するリリスとボルコフがアイリスの今と昔、夢と現実の姿の象徴のようだった。
生きることに執着する第三章での徐々に追い詰められる絶望感と最後の終着点がこの作品が目指した結末ですべてが一つにまとまった瞬間。正直、卑怯。

全体を通すと最後の結末にむかって予定調和に物語りが進み、感動を与えようとする作者の意図がわかりやすいところはある。それでも場面ごとに丁寧にきれいにキャラクター・アイテムを配置しているのはすごい。終章が冗長だったりして余韻が薄れてしまう部分はあるけど、読了して読んでよかったと自然に余韻を感じた作品はかなり久しぶり